技術情報・バーコードの基礎知識Basic knowledge of the technical information bar code

バーコードシステムのチェックポイント

Last Update 2017.1.5

はじめに

バーコードや2次元シンボルのシステムを導入したが、思ったほど効果が出ていない、あるいはトラブルが多く効率が低下した、大きなシステム変更が必要になったといった話を聞くことがある。それは、システム導入が目的になっており、本来のシステム導入により解決したい課題や解決方法が不明確であったり、将来を見据えたシステムになってなかったりすることが多い。そこで、次にバーコードシステムや2次元シンボルシステムを導入するためのチェックポイントについて説明する。

どんなシンボルを使用するか

当初は、バーコードを工場、倉庫、店舗等の限定された場所で使用されていたが、現在は、SCMやEDIのコンセプトにより、企業や業界を越え生産から物流、販売、保守サービスまで一つのバーコードで使用するようになってきている。したがって、バーコードシンボルを選択する上では、供給者の論理ばかりでなく、物流業者や小売業者の視点を考慮して検討する必要が出てきている。

この問題を解決するためにISOとIECは共同委員会を設立し、4種のバーコード(UPC/EAN、Interleaved 2of5、Code39、Code128)と4種の2次元シンボル(QR Code、PDF417、DataMatrix、MaxiCode)を規格化した。したがって、グローバル化に対応するためには、まずこれらの中から選択することになるが、それでも8種類もあるのでは、ユーザにとっては選択肢が多過ぎると言える。

流通業界では、GS1(EAN.UCC)が、強いリーダシップにより、商品シンボルはUPC/EAN、流通EDIシンボルはGS1-128(UCC/EAN-128)と言うように決めているが、他の業界では国際的標準シンボルがないので悩みは大きい。そこで、ISOでは、アプリケーションの規格化も行っている。2000年に規格化されたISO15394は、国際的な輸送ラベル規格であり、仕分用のシンボルとしてはMaxiCode、EDIデータはPDF417、荷物を識別するためのライセンスプレートはCode39、Code128、GS1-128になっている。ライセンスプレートのバーコードは、EDIFACTのデータ識別子を使用する場合はCode39またはCode128を、GS1のアプリケーション識別子を使用する場合はGS1-128のように使い分けている。

ISO15394は、2003年にJIS-X-0515としてJIS化された。JIS規格では、EDIデータに当事者間の合意があればQRCodeの使用を認めている。これは、日本自動車工業会がQRCodeをカンバンに採用した実績を考慮したものである。このように国際規格や業界で標準化が進んでいる一方で、データのセキュリティ性を重視している企業は、独自にシンボルを選定している。したがって、シンボルの選定では、誰が何の目的で使用するかを明確にした上で検討しなければならない。

どんなデータをバーコード化するか

バーコードデータは、注文番号、納品番号、製造番号、契約番号のようなID番号の場合と製品番号、数量、製造日、価格のような生データの場合がある。ID番号は、出荷データや生産データ等を素早く検索するために不可欠であり、今日のバーコードの基本になっている。一方、生データをバーコードにした場合は、オフラインでデータ入力することができるので、ホストコンピュータやネットワーク環境に影響されない安定したシステムが構築できる。特に、出荷情報や製品情報のEDIデータをバーコード化することは、入荷と同時にそれらの情報を簡単に入手できることからその価値は計り知れない。

ここで注意しなければならなにことは、ユーザの利便性を考慮して何でもかんでもデータを入れないことである。2次元シンボルは、約1KB程度まで作成することができるが、データ量を大きくすることは、単にシンボルが大きくなるばかりでなく、読取時間が長くなるからである。作業者に負担を与えないで読み取るためには、読取時間は0.2秒以下が望ましく、0.5秒以上では運用に支障を来たす。したがって、現状のリーダの読取性能では数百バイト程度に抑えることをお勧めする。

どのような形式でエンコードするか

バーコードの標準化には、シンボルの体系や印刷品質と言ったシンボルの標準化とデータの種類、桁数、属性、連結方法等のコンテンツの標準化がある。従来、バーコードは、IDとして使用されてきたので、前者の規格で充分であったが、GS1-128や2次元シンボルの登場により複数のデータをエンコードすることが増えてきたため、後者の規格が重要になってきた。

そこで、ISO/IECは、データの種類と属性を決めるアプリケーション識別子(AI)とデータ識別子(DI)に関してISO15418で規格化し、データ構造に関してISO15434で規格化している。アプリケーション識別子は、GS1が主に消費財業界向けに作成した識別子である。データ識別子は、米国のANSI規格(MH10.8.2/3)に規定されたもので、主に生産材を対象に作成された識別子である。

また、データ構造規格ISO15434では、メッセージの種類の選択やデータを連結する方法について規定している。EDIフォーマットは、現在、地域や業界の標準が複数存在しているために、そのどの方式にするかを選択できるようになっている。例えば、世界標準メッセージのEDIFACT、米国製造標準メッセージのANSI(American National Standard Institute) ASC X12、国内流通標準メッセージのJEDICOS(Japan EDI for Commerce System)、国内製造標準メッセージのCII(Center for the Information of Industry)があり、それぞれにフォーマット識別番号が規定されている。

そして、データ構造は、メッセージヘッダの”[ ]> RS”で始まり、フォーマットヘッダ、フォーマットデータ、フォーマットトレーラ”RS”、そして、メッセージトレーラ”EOT”で終わりとなっている。このような標準的な識別子や標準的データ構造を使用することにより、SCMの構築を容易にするばかりでなく、グローバル化した生産拠点や物流拠点とのデータ連携を容易にすることができる。

国際的な標準規格動向をチェックする

ISO/IECでバーコードコンテンツの標準化が行われてきている一方で、各業界は独自に標準化をすすめている。世界標準の流通商品バーコードは、米国で使用している12桁のUPCコードと、その他の国で使用している13桁のJAN/EANコードがある。また、世界共通の物流バーコードは、13桁のJAN/EANコードの前に物流識別コード1桁を付加した14桁のITF14になっている。したがって、現在、商品コードは、12桁、13桁、14桁の3種類が存在している。

これは、EDIによるデータ交換をする上で弊害になっているので、2005年から世界の共通商品コードは、14桁のグローバル・トレード・アイテム・ナンバー(GTIN)として統一された。したがって、これからデータベース設計をする場合は、JANコードの13桁でなく、14桁にすべきである。しかし、バーコードについては、従来どおりUPCは12桁、JANは13桁のままであるので、入力したデータの前にゼロを付加するシステム必要である。

また、GS1は、従来のUPCやEANではマーキングできないような食品や医薬品のために14桁の省スペースシンボルGS1 Databar(RSS14)を提案している。また、ロット番号等の品質情報については、UPC、JAN、GS1-128、GS1 Databarシンボルの上に2次元シンボルMicroPDF417を付加した合成シンボルを提案している。

バーコードか2次元シンボルか

2次元シンボルは、大容量データ、高い情報化密度、シンボルの極小化、バイナリデータ、高速読取、誤り訂正機能のよる高信頼性、等々、バーコードより優れたと特徴を多く持っている。したがって、将来、バーコードは無くなってしまうのではと心配する人がいるが、2次元シンボルのシェアは、相変わらずバーコードの数パーセントでしかない。その理由にリーダの価格問題があるが、リーダ価格は数年前に比べ非常に安価になり、とても高くて買えないレベルではなくなっているのであるから、もっと加速度的に普及しても良いものである。しかし、ゆっくりとしか普及していないのは、バーコードの置き換えに使用されてないからである。

商品コードや製品番号としてのIDマーキングとしては、従来のバーコードで充分な用途が多く、2次元シンボルを使用しなければならないのは、電子部品や宝石など小さな商品に限られる。大容量データを必要としているところで大きな市場はEDIであるが、この分野は、業界の標準化が不可欠であるので、普及の牽引車になるには時間がもっと必要である。海外では、バイナリデータの特長を生かして顔写真を2次元シンボルにしたIDカードが使用されているが、日本では、そのニーズは少ない。このように2次元シンボルの絶対的必要性が求められる用途は、まだ少ないのである。

しかし、製造現場などでは、現場の要求から徐々にデータが増え、ついにバーコードでは収まらなくなったときに、2次元シンボルに切り替えている。このようにバーコードか2次元シンボルかを二者択一で検討するより、必要に応じて2次元シンボルを使用するようにフレキシブルな考えが必要であり、それに対応できるようなシステム設計をしておくことが肝心である。例えば、GS1-128のように複数のデータを連結できるようなシンボル体系にしておけば、そのまま2次元シンボルに変更しても、リーダのみを変更するだけでシステム的な大きな変更を伴わないですむ。

マトリックスシンボルかスタックシンボルか

2次元シンボルの選択で常に問題になるのは、マトリックス型かスタック型かであるので、その特長の違いを理解しておく必要がある。

まず最大情報量については、シンボル規格では、QRCodeやDataMatrixの方が大きくなっているが、シンボルの情報量を大きくすると、1セル当たりと画素数が少なくなって読み取りできなくなるから規格を比較する意味はない。また、前に説明したように、実用的な読取率を確保するためにデータ量は数百バイト以下が望ましいことから、どちらを選択しても大差ないことになる。スタック型は、レーザスキャナによる読取が可能であり、広範囲なスキャンができることから、規格最大までシンボルを大きくしても読み取りが可能である。しかし、バーコードである限り読取方向の制約があるため、イメージセンシング方式は魅力的である。イメージャを使用する限り最大情報量を議論する意味はない。

情報化密度は、セルで構成されているマトリックス型の方が断然有利である。マトリックス型の中でも、切り出しマークの数と大きさにより情報化密度は異なってくる。スタック型では、横長の形状になる程、スタート・ストップコードのオーバーヘッドが減少するため、情報化密度は向上する。

極小シンボルとしては、マトリックス型が有利であり、最小サイズは規格によって決定される。最小セル数は、DataMatrix(ECC200)が10×10、MicroQR codeが11×11、QR Codeが21×21である。実際の運用では、面積比だけでシンボルを選択する訳にいかないことがある。例えば、プリント基板の周囲のグランド部分にマーキングをしたい場合は、正方形より長方形の方が都合良い。このような場合は、面積比は劣っていても、長方形にできるスタック型やDataMatrixが適していると言える。

誤り訂正機能の限界と副作用とは

誤り訂正機能において注意しなければならないことがある。誤り訂正能力は、汚れや傷に対する万能薬のように見られることが多いが、実は、この薬が効かない場合や副作用もあるからである。例えば、QR Code, DataMatrix, MaxiCodeのような切り出しマークがあるシンボルで、その切り出しマークが汚れて見えなくなってしまった時、誤り訂正機能が働いて、読み取りできるであろうか。一般的にリーダは、この切り出しマークを見つけてシンボルの種類を認識しているので、シンボルの種類が認識できなければ、当然読み取ることはできない。つまり、誤り訂正機能は、あくまでもデータ領域の障害に対してしか機能しないのである。

PDF417は、スタートコードとストップコードが両方無くなったときは、シンボルの認識ができず読み取りはできなくなるが、どちらかが残っていれば、読み取ることができる。両方なくなることは、極めて考えにくいので、PDF417は、事実上、読取不能になるデットポイントはなく、シンボル全体に対して確実に誤り訂正を働かせることができる。

また、2次元シンボルをファックスで送信する時やドットプリンタで印刷した時、誤り訂正能力により確実な読み取りを保証できるだろうか。いずれの場合も2次元シンボルが全体にぼけていれば、正しいデータの読み取りができないため、誤り訂正の演算をすることはできない。したがって、幾ら誤り訂正を高くしても読み取りはできない。このような場合は、原始的ではあるが、バーやセルのサイズをできる限り大きくする方が効果的である。つまり、誤り訂正能力とは、あくまで部分的な汚れや傷に対してのみ効力を発揮するものなのである。

更に、小さな汚れや傷があった場合は、どうなるだろうか。バーで構成されているPDF417のようなスタック型は、セルで構成されているマトリックス型に比べて、小さな汚れでバー全部が喪失する確率が低い。したがって、スタック型の方が、汚れや傷に強いと言える。

次の誤り訂正能力の副作用とは、シンボルサイズとデコード時間である。誤り訂正能力を高めると言うことは、既に説明したようにシンボルサイズが大きくなる。しかし、これ以上に問題なことは、演算が増えるためにデコード時間が長くなることである。通常、100文字程度のデータであれば、0.2秒程度の読取時間に充分抑えることができるが、それ以上の場合は、使用する前に充分テストをするようにしたい。

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